この記事の概要
- インデックス投資における悩みがちポイント「投資信託を買うか/海外ETFを買うか」の問題について考察
- 投資信託のほうがETFよりも信託報酬、運用コストは高い
- ETFには分配金にかかる税金という「隠れコスト」がある
- 隠れコストもすべて込みのトータルコストは、投資信託とETFでどちらが安いのか、検証
Hello! リカルドです。
今回は
「投資信託 vs ETF」
について。
投資の王道ともいえる「インデックス投資」
実際にやるといっても、投資信託で運用するのか海外ETFで運用するのか、
というのは投資銘柄と並んで悩みがちなところではないでしょうか。
今回はインデックス投資でありがちな疑問
「投資信託とETF、どっちで運用するのがいいのか問題」
について考えていきます。
投資信託とETF、コスト的にはどっちがお安い?
ETFの方が経費率は安いけど、ドル転とか税金とかが面倒…
投資信託は少額から投資できる、ETFは経費率が安い、
などそれぞれに様々な特色がありますが、
今回は「運用コスト」の視点から、
運用を続けていったときに実際にかかる費用を考えてみました。
「投資信託とETF、好きな方買え」という話で絶対的な正解はありませんが、
どのようなコストがどれくらいかかるのか、試算していきます。
途中は信託報酬や経費率の細かい比較なので、細かいのをみるのが面倒な方は最後のまとめまで飛ばしてもらって大丈夫です。
運用コストの比較:S&P500インデックスファンドで比べる-購入時、運用時、税金-
今回は比較対象としてS&P500連動の投資信託とETFで比較をしてみます。
- 投資信託:SBI・V・S&P500インデックスファンド
- ETF:Vanguard S&P500 ETF (VOO)
この2つを買付・運用をしたとして比較します。
購入時・売却時の比較
最初に購入・売却の際にかかる費用をみていきます。
まずは投資信託。
今回ピックアップしたSBI・V・S&P500インデックスファンドは
買付時にかかる購入時手数料、売却時にかかる信託財産留保額いずれも無料。
したがって、SBI・V・S&P500インデックスファンドは
売買にかかる手数料はゼロで取引することができます。
投資信託、優秀です。
(SBIアセットマネジメント SBI・V・S&P500インデックス・ファンド 交付目論見書 )
次にVOO。
ETFの購入そのもには手数料はかかりませんが、
SBI証券では米国株式・ETFの取引には1約定あたり、
約定価格の0.495%(最低$5〜最大$20)の手数料がかかります。
したがって、売買を行うと往復で0.99%の手数料がかかります。
ただし、SBI証券では特定のETFについては、
買付手数料が無料で取引ができます(買うときだけ)。
VOOもこの対象になので、
売買にあたっての手数料は、売却時のみ0.495%の手数料がかかります。
長期運用を前提に考えると、売却するときには数百万〜数千万円程度に
保有資産額が増えているでしょうから、
一度に売却する金額に対してかかる手数料の割合は低く抑える事ができると思います。
(仮に500万円売却したとして手数料が2,000円とすると、手数料率は0.04%)
あとは、将来VOOを売却するときにはもっとサービスが向上していて
取引手数料が無料になるかもしれません(ただの希望)。
運用時の差
次に、実際に運用していくときにどのくらいの費用がかかるのか、みていきます。
まず投資信託。
信託報酬の運用は、信託報酬+その他コストがかかる費用の総額で計算していきます。
SBI・V・S&P500インデックスファンドの信託報酬は0.0938%
投資信託の中では最安級の信託報酬ですね。
ただ、投資信託の運用にかかるコストはこれだけではありません。
投資信託の運用にあたっては、実際に資金を海外機関に保管したり送金したり、
ファンドに対する監査を受けたり、といった様々な実務にかかる費用(「その他費用」とくくられる)があります。
この費用は目論見書をみるだけでは明確な数値が書かれていないため「隠れコスト」なんて言われたりします。
これは毎期の運用結果を報告する「運用報告書」に書いてあります。
今回取り上げたSBI・V・S&P500インデックスファンドにかかる
「その他費用」は2020年9月期の運用報告書によると0.018%。
締めて0.11%
(内訳:投資信託の信託報酬0.08%、投資先ファンドVOOの経費率0.03%)
100万円保有したとしても年間1,100円で運用してくれるので、良心的ですよね。
SBIアセットマネジメント SBI・V・S&P500インデックス・ファンド 運用報告書 (第1期))
次にVOOです。
これは、先ほどの投資信託が投資している先のファンドを直接買いにいく形になります。
VOOの経費率0.03%だけ。
(参考: Bloomberg )
100万円投資していてかかる費用は300円という安さ。
配当金にかかる税金もコストになる
ですが、実際の運用にあたって考えるコストは売買手数料と運用コスト以外にもあります。
それが「配当金にかかる税金」です。
VOOは毎期の運用成果に応じて分配金が発生します。
その配当金に対しては、米国で10%、日本で(残りの90%に対して)20.315%が課税されます。
投資信託も同じVOOに投資しているわけですが、投資信託の場合、
投資信託の内部で分配金を再投資に回すため、
20.315%の課税を実質的に回避して再投資することができます。
VOOの直近のデータを元にした分配金利回りは1.31%なので、これを基準に計算していきます。
(Vanguad社 Vanguad S&P500 ETF(VOO) Price&Performance)
100万円投資したとして、配当金は年間で13,100円とします。
- 投資信託の場合
まず、分配金に対して10%が米国で課税され、残りの90%が再投資に回ります。
運用資産に対するコスト比率を求めると、
1.31%×10%=0.131%
つまり100万円の運用資産に対して1,310円のコスト(=税金)がかかることになります。 - ETF(VOO)の場合
まず分配金に対して10%が米国で課税されるのは同じです。
そして、残りの90%に対してさらに日本側で20.315%が課税されます。
運用資産に対するコスト比率は
1.31%×10%+1.31%×90%×20.315%=1.31%×18.28%=0.2395%
100万円の運用資産に対して2,395円のコスト(=税金)がかかることになります。
トータル運用コストを比較ーSBI・V・S&P500とVOOー
では、ここまで試算してきた運用コストを整理します。
今回は経費率や信託報酬などのいわゆる「運用コスト」に加えて
「分配金にかかる税金」も運用コストの一部としてトータルの運用コスト(1年当たり)を試算しました。
その結果がこちら。
以上の通り、投資先ファンドからの配当金にかかる税金をコストとみなし
「運用中に自分の試算から外に出ていく資金」がトータルでどのくらいになるのか、を比較してみました。
結果としては、0.0285%の差で投資信託が低コストということになりました。
売却時の手数料を考えるとコスト差はもう一歩開くと思われます(場合による)。
その他の主要インデックスファンドの比較
その他、同様の方法でS&P500と並んで
王道と言われるようなファンドについてもコストの差を試算します。
全米株式:楽天 全米株式インデックスファンド VS ヴァンガード VTI
信託報酬としては、SBIから新たにリリースされた
「SBI・V・全米株式インデックスファンド」が信託報酬としては最安です。
ただ、こちらはまだリリースされたばかりで1年経っておらず、
運用報告書が出ていません。
信託報酬以外にかかる「その他の費用」を含めた
トータルの実質コストが不明のため、
今回は楽天の全米株式インデックスファンドを比較対象にします。
結果発表
なお、直近配当利回りは1.23%として試算(7/20時点 Bloomberg)
トータルの運用コストとしては、0.0449%の差で投資信託が低コストということになりました。
VTIがVOOと比べて配当利回りが若干高いため、そこにかかる税金コストがトータルコストを押し上げた形です。
(楽天・全米株式の運用報告書はこちら。)
全世界株式:eMaxisSlim オールカントリー VS ヴァンガード VT
正確には連動指標が
- オルカン:MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス
- VT:FTSEオール・ワールド・インデックス
とインデックスが異なりますが
「全世界に広く投資するならコレ」という代表的なものなのでこの2者を比較します。
結果はこちら。
直近配当利回りは1.99%(7/20時点 Bloomberg)
こちらもトータルコストとしては0.2658%の差で投資信託が低コストということになりました。
やはり、配当利回りが2%近くあるためここにかかってくる税金コストが高い。
※オルカンの運用コストは投資先ファンドの信託報酬・経理率も考慮すると
全米株式より運用コストが高くなるかなと想定していたのですが、
運用報告書を見たところ、運用コストは0.18%と全米株式よりも低くて意外でした。
(三菱UFJ国際投信 eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー) 第3期 運用報告書)
まとめ
今回は投資信託とETFの運用コストを比較しました。
商品そのものにかかる経費率、信託報酬でみるとETFが有利になりますが、
分配金に課税される税金までトータルで見て考えると、
1年間で自分の試算から外に出ていく資金という意味では投資信託が有利ということがわかりました。
(ただ、どちらもほぼ変わらないレベルで優秀)
それを考えると、運用にあたっての手軽さ、例えば
- 1円単位で購入ができる
(ETFは1株単位なので1株未満の金額では端数が生じる) - 分配金を再投資に回すため資産形成の効率が良いし再投資をファンド内で自動でやってくれる
- 円で購入できる(ドル転をする手間などがかからない)
などなど
という点を考慮すると、コストや手間といった観点では、
投資信託を選択するのが有利そうだと思っています。
余計なことを考えず手間なく投資をできるという点がよいですね。
とはいえ、両者の間で劇的な違いがあるわけではないので、
好みの問題で決めてしまっても良いと思います。
↓投資信託、インデックス投資に関する記事はこちら。
それでは今回はここまで!ありがとうございました。 Adiós!!
リカルド
都内在住ギリ20代の会社員。社会人1年目、ほぼ貯蓄ゼロから家計管理を始め、5年目で1,000万円の資産形成に成功。学び、資産形成の過程で気づいたことを自分なりの視点で考察して発信します。資産形成を頑張る皆さんと経験や疑問、考える視点を共有したい。自称ガジェットオタ歴10年以上。好きなものはガジェットと旅行(海外18カ国、国内43都道府県)、サッカー。
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