この記事の概要
- 2022年にバリュー株が来る!と言われている背景を解説
- バリュー株に投資できる米国ETFをピックアップ
- 投資するETFを選ぶ際に確認しておきたい情報を比較整理
こんにちは、リカルドです。
2022年になりました。
今年はどんな1年になるのでしょうか。
投資環境の面では、米国では相場の転換点を迎えるかもしれません。
今回は相場転換に向けての準備として、バリュー株に関するETFをピックアップしてみました。
2022年はバリュー株の年になる?
2020年、2021年とグロース株が大幅にバリュー株をアウトパフォームしていましたが、2022年はバリュー株に投資妙味があるとみられています。
2020年、2021年は量的緩和政策(*)を背景に株式相場全体にとって追い風で、特にグロース株がバリュー株をアウトパフォームする相場でした。
(*)FRBが米国債を800億ドル/月、住宅ローン担保証券(MBS)を400億ドル/月 購入
2022年の相場動向として、こうしたグロース株も勢いが衰え、バリュー株がグロース株をアウトパフォームするようになるのではないかということです。
背景には、2022年に予想されるFRBの金融政策の転換があります。
2022年FRB金融政策のポイント
- 量的緩和策の縮小(テーパリング)を加速する
米国債100億ドル、MBS50億ドルずつ毎月の購入額を減額し、2022/6に量的緩和終了
[↓ 量的緩和終了を前倒し]
米国債200億ドル、MBS100億ドルずつ毎月の購入額を減額し、2022/3に量的緩和終了 - FFレート(政策金利)は、現在の0〜0.25%から2022年中に3回の利上げ(0.75%〜1%)が見込まれる
このように2020年、2021年と
ゼロ金利+量的緩和が行われていた環境から一転する公算が高く、
これがバリュー株>グロース株となることが見込まれる主な要因です。
なぜ金融緩和が終わると
バリュー株が強くなるの?
- 金利が上がる=現在のお金の価値が上がるということ
→株式の価値が相対的に下がり、株式にとっては逆風
特に将来の大きな利益に期待して買われるグロース株にとっては厳しい。 - 量的緩和縮小+利上げ は株式にとって逆風となり株価の大きな伸びが期待しにくい。
→配当や自社株買いといった株主還元策をやってくれるような企業の魅力がグロース銘柄より大きくなる。
そもそも2022年は市場全体としてはそれほど良い相場にはなりにくいと見られ、安定的に業績(利益)を出せるような銘柄が良いパフォーマンスを出せるのではないか?
という予測の中でバリュー株に注目が集まっている。
ということで、バリュー株を厚めに持って2022年の相場を迎えようと思いながらも、なかなか個別銘柄を選定するのも難しい…
ではETFを使ってバリュー株に投資しよう!ということでいくつか代表的なETFをピックアップ、比較してみました。
※今回のETFの各種情報は
Yahoo Finance
ETF Database
Portfolio Visualizer
を参考に使っています。
(Yahoo Finance活用方法についての記事はこちら)
バリュー株にまとめて投資できる代表的なETF
今回ピックアップしたバリュー系ETFはこちらです。
バリュー株に関するインデックス連動型のETFをピックアップしてみました。
※番外編として特に投資妙味があると注目されているセクターに絞ったETFはこちらで整理しています。
- バンガード バリュー インデックスファンドETF (VTV)
CRSP US ラージキャップ バリュー インデックスに連動するETF。
米国の大型バリュー株に広く分散して投資ができる。 - バンガード メガキャップ バリュー インデックスファンド (MGV)
CRSP US メガキャップ バリュー インデックスに連動するETF。
超大型株が投資対象で、VTVよりも投資先を時価総額が大きい大企業に絞られている。
(メガキャップとは一般的に時価総額10兆円超を指すことが多い) - バンガード S&P500 バリュー インデックスファンド (VOOV)
S&P500採用銘柄の中のバリュー株を投資対象とするETF。 - SPDR ポートフォリオ S&P500 バリューETF (SPYV)
こちらもS&P500のバリュー株を投資対象とするが、連動指標がVOOVとは異なるため組入銘柄の割合などは微妙に違う。
バリュー株ETFの比較
バリュー株ETF基本情報の比較
今回ピックアップした4つのETF、まずは各種情報の一覧です。
VTV | MGV | VOOV | SPYV | |
連動指標 | CRSP US
Large Cap Value Index |
CRSP US
Mega Cap Value Index |
S&P500/Citigroup Value Index |
S&P500 Value Index |
株価 | $149.41 | $108.48 | $153.68 | $42.61 |
AUM($) | 92.78B | 5.01B | 2.60B | 12.98B |
直近3ヶ月平均出来高(株) | 2,668.6K | 134.7K | 67.1K | 2,312.6K |
設定 | 2004/1/26 | 2007/12/7 | 2010/9/7 | 2000/9/25 |
組入銘柄数 | 349 | 151 | 433 | 450 |
経費率 | 0.04% | 0.07% | 0.10% | 0.04% |
直近1年配当金/株 | $3.04 | $2.31 | $2.93 | $0.82 |
配当利回り | 2.10% | 2.21% | 1.97% | 1.99% |
シャープレシオ(*) | 0.94 | 0.96 | 0.87 | 0.86 |
ソルティーノレシオ(*) | 1.51 | 1.57 | 1.38 | 1.37 |
(*)2010/10~2021/12の数値 |
(各種情報はETF Database より。
シャープレシオ/ソルティーノレシオはPortfolio Visualizerにて試算)
AUM(Asset Undr Management: 時価総額みたいなもの)や出来高をみると
VTV、SPYVの2銘柄が流動性の観点では優位と言えそうです。
S&P500に採用されているような大型の個別銘柄では1日あたり100万〜200万株くらいは普通に出来高があるので、それと比較するとMGVやVOOVの出来高はやや少ないです。
組入銘柄数ではSPYVとVOOVが優位です。
ただ、SPYVとVOOVは母数がS&P500なので、マーケット全体から幅広くバリュー株を拾うという点ではVTVも分散が利いていると言えるでしょう。
SPYVとVOOVは実質「S&P500ーGAFAMT」みたいな感じですね。
VTVとSPYVは経費率でもMGV、VOOVに勝っているので、困ったらVTV or MGVという選択肢が無難そうです。
逆に、この中ではMGVとVOOVを選ぶ積極的な理由は特段ないとも言えますが、この4つのETFは内部のポートフォリオが若干異なりますので、セクター別の保有割合などを見て好みのものにする、というのもありでしょう。(後述します)
なお過去パフォーマンスからみたシャープ・レシオとソルティーノ・レシオではVTVとMGVがやや有利といったところ。
※シャープ・レシオ
リスク1単位辺りのリターンを数値化したもの。「同じリスクを取るならリターンが高い方はどちらか」を比較する際に用いる。数値が大きい方が良い。
※ソルティーノ・レシオ
リスク対リターンの効率を数値化した指標。シャープ・レシオは株価が上昇・下落どちらの場合も含めて計算するのに対し、こちらは下落したときのみを対象に計算する。数値が大きいほど下落に強いことを示す。
以下、ETFの主要項目に関する比較整理です。
VTV | MGV | VOOV | SPYV | |
AUM | ◯ | × | × | ◯ |
出来高 | ◯ | △ | × | ◯ |
組入銘柄数 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
経費率 | ◯ | ◯ | △ | ◯ |
下落耐性 | ◯ | ◯ | △ | △ |
バリュー株ETFの中身をチェック〜セクター別保有割合を見よう〜
次にETFの中身を見ていきましょう。
まずは保有割合トップ10。
保有銘柄 | VTV | MGV | VOOV | SPYV |
1 | BRK.B (2.87%) | BRK.B (3.53%) | BRK.B (3.01%) | BRK.B (2.86%) |
2 | JPM (2.77%) | JPM (3.42%) | JPM (2.79%) | JNJ (2.35%) |
3 | UNH (2.45%) | UNH (3.02%) | BAC (1.93%) | PG (2.07%) |
4 | JNJ (2.40%) | JNJ (2.96%) | PFE (1.77%) | DIS (1.55%) |
5 | PG (2.05%) | PG (2.53%) | DIS (1.55%) | UNH (1.43%) |
6 | BAC (1.97%) | BAC (2.43%) | XOM (1.83%) | XOM (1.35%) |
7 | PFE (1.76%) | PFE (2.17%) | JNJ (1.45%) | JPM (1.32%) |
8 | XOM (1.48%) | XOM (1.83%) | CSCO (1.36%) | KO (1.20%) |
9 | CMCSA (1.34%) | CMCSA (1.65%) | CVX (1.28%) | CMCSA (1.20%) |
10 | ABT (1.30%) | ABT (1.61%) | VZ (1.22%) | CVX (1.18%) |
VTVとMGVのトップ10は完全同銘柄でした。
MGVの方が組入銘柄数が少ない分、1銘柄の割合が大きくなっています。
どれも多少順番や割合は違えど、だいたい似ていますね。
トップはBEK.B(バークシャー・ハサウェイ)、ついでJPM(JPモルガン・チェース)などの金融系が目立ちます。
その他ではJNJ(ジョンソン・アンド・ジョンソン)やPFE(ファイザー)などのヘルスケア、一般消費財のPG(プロクター・アンド・ギャンブル)、エネルギーのXOM(エクソン・モービル)、CVX(シェブロン)などがトップ10に入っています。
次に、各ETFのセクター別保有割合です。
(いずれもETF Database からの引用)
VTV
MGV
トップ3セクターの割合が最も大きいのがMGVです。
Finance(金融)、Health Technology(ヘルスケア)、Consumer-Non-Durable(一般消費財)で50.32%を占めます。
VOOV
VOOVは金融セクターの割合が27.01%と最も高いです。
SPYV
4つの中ではセクター別での分散が一番効いているのがSPYVでしょう。
金融セクターが最大なのは同じですが割合は20%と他の3つより低い一方、その他のセクターは割合が他よりも大きくなっています。
過去のパフォーマンス比較
最後に、パフォーマンスの比較です。
最も若いVOOVが設定された2010/9/7から2021/1/4までのパフォーマンス比較です。
SPYVが若干見劣りしますが、個人的にはそこまで大きな差はないと思います。
過去のパフォーマンスよりは先述の情報、経費率や組入銘柄など中身を見て自分の好みに合うものを選ぶ方が幸せになれるかもしれません。
まとめ
今回はバリュー株ETFについてまとめました。
2022年は米国の金融政策も転換が見込まれており、これまで好調だったグロース株からバリュー株へのシフトが起きるとの見方が増えてきています。
今回ピックアップしたETF4つはいずれも米国のバリュー株に広く分散して投資できるETFです。
各ETFの時価総額や経費率、組入銘柄、パフォーマンスなどを比較しましたが、個人的にはVTVかSPYVが無難かと思いました。
やはり時価総額が大きい点、経費率が低い点で優位性があります。
ちなみに筆者は現在VTVを保有しています。
2022年米国のバリュー株優勢の波に乗ろうという魂胆ですが、VTVを選んだ背景としてはAUMの額と経費率、バックテストから見えた下落局面に(やや)強いという点です。
下落局面に強いかどうかはあくまでも過去パフォーマンスに基づくテストであり、将来については保証がありませんが、AUMや経費率からVTVかSPYV、この2択を選ぶのにソルティーノレシオが高かったVTVを選んだ、ということです。
2022年はここ数年の相場からは動きが変わる年になりそうです。
実際、2021年末頃から今まで上昇一本調子だったGAFAMも値動きがヨコヨコ、下落になったり、ハイパーグロース株が急落したりする一方、バリュー株が上昇する局面が増えている印象もあり、転換点に差し掛かっている?と思えるような相場状況でもあります。
利上げのタイミングでは相場全体が不安定になることも想定されますが、不安定な中でも力強く上がっていくのは業績をしっかり出しているバリュー株である、という考え方は筆者自身も合理的だと感じています。
量的緩和の縮小と終了、政策金利の引き上げと米国株式市場の転換点になり得るイベントが多い2022年ですが、引き続き相場の動きは注視して2022年乗り切っていきたいと思います。
今回の記事が、皆さんのETF探しの参考になれば幸いです。
それでは今回はこのへんで。
※本記事は当該銘柄への投資を推奨するものではありません。
投資判断は自己責任でお願いします。
リカルド
都内在住ギリ20代の会社員。社会人1年目、ほぼ貯蓄ゼロから家計管理を始め、5年目で1,000万円の資産形成に成功。学び、資産形成の過程で気づいたことを自分なりの視点で考察して発信します。資産形成を頑張る皆さんと経験や疑問、考える視点を共有したい。自称ガジェットオタ歴10年以上。好きなものはガジェットと旅行(海外18カ国、国内43都道府県)、サッカー。
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